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2016年7月 3日 (日)

オデオン広場ふたたび(1)到着

6月17日(金)到着
   最初からあまり暗い話は書かないでくれ、と西日本の親類に言われたので、いつもの疲れ切って到着の話は省略します。ただ、エトワール広場から乗ったメトロ6番線で、危うく首を吊って死にそうになったことは記しておきましょう。モット・ピケ・グルネルで10番線に乗り換えるとき、扉そばの折りたたみの椅子に座っていたのですが、斜めがけしていたバッグの紐が腰までずり落ちていたのに気づかず慌てて降りようとしたため 、紐が椅子に挟まったまま首がスタン・ハンセンのウエスタン・ラリアットを浴びたようにのけぞってしまい、危うく転びそうになりました。意識が飛ばなかったのは、首が太かったからで、昔、締め技の練習のとき柔道部の先輩に「お前は将来首を絞められて殺されることはないから安心しろ」と言われたのを思い出しました。

   そんなこんなで、金曜の夜の8時にクリニュー・ラ・ソルボンヌ駅を降りて医学校通りのオテル・サン・ピエールに到着しました。一昨年に続き二度目の宿泊です。ネットでは宿泊料の安さに比してレセプションの応対がきちんとして感じ良いということでしたが、私には何よりオデオン近くの至便なロケーションが気に入っています。部屋は5階(日本では6階)で、冷蔵庫はむろん無し。バスタブの部屋は予約した時点で埋まっているとのことでシャワーのみです。しかし、眺望は前回同様すばらしく、目の前にソルボンヌ医学部、遠くにサン・シュルピスの双塔が望見できます。前夜睡眠がとれずフラフラで食欲もなかったので、荷物を置くと、近くのモノプリでエビアン1.5ℓを2本買って、ホテルでEuro2016スペインートルコ戦を見ながら寝てしまいました。妻は飛行機でもらった人形焼と即席味噌汁を飲んで、やはりすぐ寝てしまったそうです。

   去年の8月、私が洗面所で歯を磨いていると、ルーミーと風呂に入っていた妻が「これで、もうパリに行くこともないな」と言ってきました。「うぐぐっ」と返事をした私は、すぐに居間のパソコンを開いて、ブッキング・コムに入り、パリ14区アレジア近くにシングル6泊5万円のホテルを見つけました。そして、風呂から出てきた妻に「 来年6月、一人でパリに行くから、安い航空券が出たらすぐ買っといて」と言いました。生涯の見納めに、思う存分、一人でパリを堪能したいと思ったのです。「わかった」と言った妻ですが、航空券を見つけることに手際良いはずなのに、9月になってもなかなか買ってくれません。どうも、私ひとりで行かせるのは心配のようです。妻によれば、ホテルはシングルもツインも値段はほとんど変わらないし、私が街歩きや本屋やカフェに行っている間、自分は邪魔せずに一人で美術館に居るというのです。そう言われると、確かに一人でいて体調が崩れたら不安だし、困った時に妻の会話力は必要だし、私一人で行くとなれば、出発のとき家のドアのところで泣かれるだろうから、私は渋々また夫婦で行くことに同意しました。

   直ちに航空券を購入し、ホテルを予約(オテル・サン・ピエールにしたのは、ルーヴル美術館に歩いて行けるからです)したものの、それからフランスの情勢は大きく変わって行ってしまいました。11月13日のパリ同時多発テロ、翌3月22日のベルギー・ブリュッセル空港と駅での自爆テロを受けて、フランスはかつてない超警戒体制に入ったのです。しかも、労働法改悪(失業率を下げるため派遣並みの採用を企業に許す)に対する激しいデモがリパブリック広場を中心に毎週行われ、警官の暴力に対する、これまた暴力的なデモが各地で頻発し、おまけに異常気象による豪雨でセーヌ川が氾濫する手前までくるということまで起こりました。

   しかし、何より変わったのはフランスを覆った虚しさと無力感です。シャルリ・エブドの時は、リパブリック広場は表現の自由とフランスの一体感を訴える群集で溢れましたが、11月13日の後のリパブリック広場は帰って来ぬ者への追悼の蝋燭で覆われました。こんなパリに行って楽しいでしょうか。妻は旅行中止を真剣に考えたようですが、ホテルはキャンセルできるものの、航空券は3万円ほど戻ってきません。止むを得ず行く決意を固めたものの、出発直前にフランスへの渡航者当ての外務省の危険勧告のメールがあって、それによると6月上旬から7月上旬までのラマダンの一ヶ月は特に注意が必要で、特にラマダン中の金曜日は厳重注意とのことでした。私たちの出発日は6月17日の金曜日で、帰りの飛行機も6月24日の金曜日です。これはもうテロに襲われたら諦めるしかありません。

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オテル・サン・ピエールの6階から西方のサン・シュルピス寺院の双塔を望みます。

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ソルボンヌ医学部の中庭がすぐ下に見えます。

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ホテルの東方の眺め。下の医学校通りはサン・ミッシェル大通りを横切ってレコール通りに続きます。奥の右側の建物はソルボンヌの大講堂(grand amphitheatre sorbonnne)。講演やコンサートが開かれます。

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