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2014年8月15日 (金)

オデオン広場へ(6)何もない一日

6月25日(水)
   美味しいパン屋を探してみようと、カルチェラタンを朝からあてもなく歩いていました。意外と見つからず、途中のBrioche d'Orというチェーン店で、大きなパン•オ•ショコラを買って、歩きながら半分ずつ食べました。食べると余計にお腹がすいてきたので、モノプリで妻はサーモン、私はジャンボンのサンドイッチを買って、クリニュー中世博物館の横の小公園のベンチに座って食べました。妻のサーモンは不味くて食べられず、半分ゴミ箱に捨ててしまいました。私のジャンボンも、頑張って食べたがやはり美味しくなく、三分の一捨ててしまいました。

    ホテルのすぐ近くの大型書店ジベール•ジョゼフに行ってみました。まだ開店前だったので、開店準備中のガードマンなどを写真に撮っていたら、黒いスーツを着た黒人のガードマンが私を指差して大声で叫んでいます。あわてて逃げて来ましたが、「パリでは黒人を撮ってはいけないんだよ」と妻に叱られました。開店したのを見計らって入りましたが、私は土曜に行っていたので、妻を案内して宗教書や哲学書のコーナーを見て歩きました。妻はここで、ルーミーの 『マスナヴィ』Mesnevi(Albin Michel)8.5ユーロ、と写真集 『パリ猫 』Paris Chats 9.9ユーロを買いました。

   またまたぶらぶら歩いて、ホテル近くの医療博物館へ。このl'Ecole de Medecine 通りは医学校の敷地がほとんどを占めていますが、その中の一つデカルト大学の校舎の中に博物館はあります。一人3.5ユーロ払って入館。吹き抜けの大きな部屋に主に外科の用具や病跡を残す頭蓋骨などが並んでいます。尿管結石を取る管や肛門を探る針金などは何とも痛々しい。ひと通り見て早々に博物館を後にしました。

    実は今日はソルドの初日で、店々のウインドーにも SOLDESの赤い紙が貼ってあります。ソルボンヌ広場近くのGAPのMENS館の前を通ると、ウインドーに飾られた割引のネクタイに思わず妻が足を止めました。9.99ユーロのネクタイが何と2.99ユーロです。店内に入って、妻が選んだものを一本買いました。それから、妻の意向でレンヌ通りまで歩き、ロクシタンで土産物をたくさん買うと、今度はラスパイユ通りのロクシタンにも行って、そこでも何か分からないものを買いました。さらにバスに乗ってマレまで行って、フラゴナールの店でまた何かを買って、ようやく妻の買い物も一息つきました。

   せっかくマレまで来たのだから、有名なゲイの本屋に行きたいと妻に言われたので、仕方なく、サン•クロワ•ラ•ブルトンヌ通りのLa Mots a la Boucheに行きました。私は全く興味がないので、外のウインドーを見ていましたが、妻がなかなか出てこないので中に入ってみると、意外とまともな本屋なので驚きました。しかし、よく見ると並べてある本はゲイの作家ばかりで、ミッシェル•フーコーまできちんと揃えてあるのには感心しました。

   それから、ランビュトー通りをポンピドーセンターの方へ歩いて、すぐの本屋、Les Cahiers de Colette に寄ってみました。ここは、Comme un roman 書店と並んでマレ地区を代表する書店ですが、こちらの方がずっと本格的な品揃えで、照明を落とした落ち着いた店内はじっくり時間をかけて書物を選びたいと思わせます。とても立派な格調ある本屋で、ここで一冊買いたかったが、妻がやや疲れ気味だったので、後ろ髪を引かれながら出て来ました。

   その後に向かったのはマレの外れにあるヨーロッパ写真美術館(MEP)で、毎水曜の17:00から入場無料になるのです。ところが、ここが今回パリ訪問の最大の失望箇所で、狭い廊下に人が多くて混雑するわ、展示されている写真はどれ一つとして見るべきものがないわ、空気が淀んでいるわ、で30分ほどで出て来ました。やはり、昨日いろんなところに行って疲れたのか二人とも足が痛くなってきたので、今夜は早々にホテルに帰ってゆっくりすることにしました。ホテル近くのモノプリの地下で、トマト、キャロットのサラダ、サーディンの缶詰、桃、いちごタルト、レモンジュース、お菓子、それに1640という名前のビール、ボルドーの半分のワインなどを買い込んでホテルに帰りました。ホテルのロビーにいつも置いてある無料の新聞 20minutes をもらってエレベーターに乗りました。

   ところで、今回はパリジャンを一部買った以外新聞を買いませんでした。なぜかというと、毎日、ホテルに無料の20minutes が置かれていたからです。今、パリでの日刊紙の苦戦は、インターネットの普及ももちろんですが、地下鉄の改札口や公共施設に置かれた 20minutesやMetro News   やDirect Matin などの無料紙の影響が大きいと思います。日本でも地下鉄にR25などの無料紙が置かれてありますが、その内容は雲泥の差です。パリの無料紙は、まずその質の高さで際立っています。記事は政治経済社会から文化、スポーツ、テレビ番組、パズルまですべてに渡って、しかも相当に洗練された内容、むろん記事自体はみな短いのですが、簡にして要を得ているとはこのことをいうのでしょう。その理由は、おそらく発行部数の多さによります。広告価格に影響あるので正確な部数は不明ですが、フィガロやル•モンドなどの10倍以上はあるはずで、それなら相当のスタッフ•執筆者を揃えられるでしょう。
 
   ページ数はDirect Matinで15ページ、Metro Newsで30ページ、20Minutesで20ページですが広告頁が多いと読みにくいので、必ずしも厚ければよいとは限りません。私は、とくに20minutesに感心しました。無料紙としてはもっとも後発ですが、レイアウトが優れていて、ジャンルごとに頁が割り当てられていてとても読みやすい。文章の読みやすさ、写真のきれいさはすでにネットで確かめていましたが、実物は想像以上です。20minutesという紙名は、パリの全通勤者の通勤時間の平均が20分であることからきていますが、確かにその時間でちょうど読み終わる感じです。

    部屋でテレビを見ながらワインやビールを飲み、夜の街にも出掛けず、そのまま寝てしまいました。いよいよ明日は帰国の日です。

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ホテルの近くのパティスリー・惣菜店ジェラール・ミロの店内。今度パリに行くときは思い切って大きなケーキを買って食べてみたいと思いました。

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バスから望遠で撮った一枚。この時期、サングラスは必須のアイテムのようです。ファッションについては無知ですが、右の60がらみの婦人はジーンズの生地のワンピース、首に薄手のセーターを巻きつけ、バッグを二つ身に付けています。左の黒人女性のファッションはとても難度が高そうです。

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ジベール・ジョセフのペルシャ文学のコーナー。ルーミーの本が三冊も平積みされています。

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妻がジベール・ジョセフで買った本。『パリ猫』はドアノーやイジスなどの古いパリの白黒写真で、ジャック・プレヴェールやサガンやコレットなども写っています。ルーミーの『マスナヴィ』はとても短い話の集積です。その一つla ville de l'amourという話を紹介しましょう。妻が夫に尋ねます。「あなたは独身の時にたくさんの町を訪れました。その中でもっとも気に入った町について私に話してください」「おお、愛するものよ」と夫は妻に言いました。「それは、あなたが住んでいた町です。とても小さい町なのに、あなたが住んでいたという理由で、今の私にはこれ以上なく大きいのです」

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6rue St.Croix la Bretagne マレにあるゲイの書店les Mots a la Bouche のウインドー。ルネ・クルヴェル(1900~1935)の全集の第一巻が飾ってありました。全二巻で、第一巻は詩・手紙・エッセイなど。第二巻は既刊の小説や論説類、ともに800ページを超す厚さで一冊46ユーロ。ロベール・デスノスやルイ・アラゴンと同様、もっとも先鋭なシュルレアリストとして出発。同性愛を嫌うブルトンと一時対立するが、最後までシュルレアリスムを体現したただ一人の男と言ってよいでしょう。35歳で服毒しなおかつガス栓も開けるという執拗な自殺を決行しました。Liberationのフィリップ・ランソンは全集発刊に寄せてクルヴェルの有名な言葉を引用しています。「地下の世界へ耳を傾けず、暗い力の真実を認めることを拒否する人間にとっては精神的生など可能ではないと確信し、たとえドン・キホーテとも出世主義者とも狂人ともみなされようと、書くことと行動のすべてを通じて、人間を限界付けるだけで元気付けようとしない障壁を撤廃することを試みようと決意した」

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ホテル近くの医療博物館。病気とその治療のことを考えると昔の時代には戻りたくありません。

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ルイ14世の侍医シャルル・フランソワ・フェリックスが王の痔ろうの手術の際に使用した細長いメス。この手術の成功により彼は15万リーブルとムリノーの土地を与えられた、と書いてあります。また、これにより痔ろうであることを皆が隠さずに公言するようになったとも記してあります。

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パリでは駅などで配られる無料の日刊紙が大変元気です。Direct MatinはDirect Soirもあるそうですがまだ見ていません。メトロニュースはヨーロッパ中で発行されている有名新聞。20minutesは私の一押しの新聞で、読みやすく、論評も鋭い。クロスワードパズルも難しくありません。パリの有料の日刊紙が苦戦するのも頷けます。

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マレの入口、サン・ポール駅で無料日刊紙を配る人々。青いパラソルは20minutes。赤いパラソルはDirect Matin。右の緑の幟はMetro Newsで、まさに戦国時代。隣のキオスクでお金を払ってパリジャンやフィガロを買う人がいるかどうか心配です。

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典型的なキオスクの風景。雑誌新聞の類はほとんどすべてここで買うことが出来ます。

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キオスクの横には売れ筋の週間新聞が張り出してあります。カナール・アンシェネはあまりに有名な風刺新聞。ネットでは読めません。政界にダメージを与えられるほどの影響力も持ちます。シモーヌ・ヴェイユがリセの廊下を笑いながら読んで歩いていた、という話も。真ん中のCharlie Hebdは絵入りの風刺新聞で、「ルクレツイア・ボルジア」の漫画入り批評は笑えました。一番下のMarianneは、元magagine literaireの編集長が主幹となった政治と文学に特化した週間新聞。やや左よりとのことです。右には季刊の写真雑誌Polka、左には自転車雑誌のVeloのポスターがあります。

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バスからパリ市庁舎横のキオスクを撮影。パリではキオスクが雑誌類を一手に引き受けているので、本屋は押しなべて落ち着いた店構えとなります。いわば不易と流行がバランスよく並存していると言ってよいでしょう。

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ランビュトー通り23-25番地、Les Cahiers de Colette書店。本格的で見ごたえのある書店。何でもあるが、良書が凡書を圧倒している感がすごい。個人的に、モンパルナスのTschann書店、カルチェラタンのCompagnie書店と並んでパリの書店ベスト3に入ります。

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