2018年7月18日 (水)

病み上がりのパリ(5)パリ・オペラ座を楽しむ

6月19日(火)

    引き続き良い天気が続いています。まず、サン・ミッシェルのジベール・ジューヌで本を探します。ところが、店が広すぎて、目移りして、1時間ほど物色したが、なかなか決まりません。出ようとすると、妻が「これを買いたい」とJ.P. ヴェルナンの本を持ってきました。それだけ買って店を出て、今度は通り向かいのジベール・ジョセフへ。そこでルーアンの地図を買って、モノプリで水とアンズのジャムを買い、ポールでバゲットとモッツァレラチーズのサンドイッチを買って、クリニューの公園で食べました。

     コンパニ書店へ行く途中、裏通りに名前の分からない古本屋があったので、2ユーロ均一本の箱を探ってみました。読んでないシムノンの小説があったので2冊買いました。実は、昔、妻が評判のよさそうなシムノンのメグレ本をアマゾンでまとめて買ってくれたので、全部読んでしまいました。たいへん易しくて読みやすいのですが、時を置きながら読むと、フランス語の成長具合がよく判るようです。
   コンパニ書店のウインドウをじっくり眺めてから店内へ。ここは私が一番好きな本屋で、広すぎないので、今話題の本や新刊本を要領よく手にとって見ることができます。妻と私はばらばらになって好みの棚で本を探しましたが、奇しくも二人ともベンヤミンの本を選んで買っていました。それにしても、知的なものが隅々までしみ込んでいるフランスの本屋のような雰囲気の本屋が日本にはほとんどないのは残念です。

   ホテルに帰る前に、ホテルのすぐ裏のBoulangère Moderneというパン屋でエクレアを二つ買いました。実はこのパン屋は6、7年前に来店したことがあるのですが、その時は母親と美少年の息子で店を切り盛りしていました。だが、今日は、かつての息子はヒゲを生やしたハンサムな青年になり、おそらく彼の奥さんであろう可愛い女性と店に立っています。ホテルに帰って、買ったばかりのエクレアをダージリンの紅茶とネスカフェを飲みながら食べました。こんなに早く帰って来たのは、昼間の2時からサッカーW杯の日本ーコロンビア戦があるからです。ところがW杯を中継しているテレビ・フランス1では日本戦を中継していません。ネットで何とか見れないかと思っても、ホテルのwifiが弱いのか全然見れません。かろうじて、実況板で状況を想像出来ました。なんと日本が開始早々1点を入れています。それからは予想を超えた展開で、ついに日本は南米から初めて勝ち点3をとったのです。

   今日は妻も私も体調はすこぶる良く、早々とオペラに行く準備をしました。妻が和服を着てお茶を飲んでいる間、例によって私が今日のオペラのあらすじを説明しました。演目はドニゼッテイの『ドン・パスクヮーリ』で、あらすじが複雑なので、途中で私の方が頭がこんぐらかって来ました。主役のドン・パスクヮーリは裕福な70歳の男。独身なので財産をすべて甥のエルネストに譲ろうと考えています。ところが、エルネストは年上の未亡人ノリーナと結婚するつもりです。怒ったドン・パスクヮーリは、自分が若い娘と結婚して財産を産まれる子供に譲る、と宣言します。ドン・パスクヮーリの友人マラテスタは、またエルネストの友人でもあって、なんとかエルネストとノリーナを結婚させようと策略を練ります。この後がまた複雑で、喜劇特有の入れ替わりと変装があって、明るく積極的なノリーナが後半大活躍して、最後はハッピーエンドで終わります。

    6時ちょうどにゲイ・リュサック通りから27番のバスでオペラへ向かいました。ところが、リヴォリ通りで全員降ろされ、通りの向かいのバス停で、27番か81番のバスを待ってくれという話です。終点まで行かないことはよくあることらしく乗客は冷静です(私たちもむろん初めてではありません)。長く待つこともなく81番が来たので、それに乗りました。オペラではグッズ売り場を見てから、右のボックス席へ。係員が鍵を入れて扉を開けてくれます。部屋は9人分の椅子があり、私たちは二人とも左側の前から三番目の席でした。ところが、その左側の前の一、二番の席が開演近いのに誰も来ません。すると右側の最前列に座っていたフランス人の初老の三人連れの婦人が、妻に、一番前に座っちゃいなよ、と言うのです。折よく顎髭を生やしたハンサムな若い係員が顔を見せたので、「ねえ、誰も来ないからこのマダムが座ってもいいでしょう?」と聞いています。係員は和服の妻をチラッと見て、にっこり笑い、魅惑的な声で、「照明が消えたら、どうぞ移って下さい」と言いました。

   というわけで、シャンゼリゼ劇場と同じく、最前列で観ることができたのですが、今夜は二人とも全く眠くありません。オペラが始まると、とりわけドン・パスクァーリとノリーナの歌声に圧倒されました。妻によると、シャンゼリゼ劇場の歌手とはレベルが一段違う、それほど素晴らしいということです。私は野球帽とスタジャンを身につけたエルネスト(黒人の役者です)のテノールが美しく感じられました。ごちゃごちゃした脚本をのぞけば、十分楽しめるオペラでした。

   帰り道、オペラ座の横で27番のバスを待っていたら、日本人の上品な老夫婦に話しかけられました。以前フランスに住んでいたそうで、人生最期の思い出にもう一度パリを訪れてみたそうです。バスはセーヌ河の夢見るような夜景に沿って進み、幸せそうな夫婦はサン・ミッシェルで降りて、私たちはリュクサンブールの停車場から静かなスフロ通りをホテルに向かって歩いて行きました。

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コンパニ書店の裏の名の知れぬ古本屋。均一本を探すスピードは誰にも負けません。

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コンパニ書店には9個のウインドウがあって、それぞれに面白い。これは映画関連のウインドウ。真ん中の下は1935ー1975の黄金時代の日本映画101。表紙は1958年小津安二郎の「彼岸花」で女優は左から有馬稲子、山本富士子、久我美子。

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このウインドウは「哲学の散歩道」と題されています。左のドゥルーズ、ガタリよりも右のバンジャマン・コンスタンのプレイヤッド文庫が私には垂涎の的です、中身はおそらく大体持っていますが。

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レジのところにあった、アルバム・ボーヴォワール。プレイヤッド文庫を三冊買うともらえます。非売品なので古書価は大変高い。

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コンパニ書店の地下の哲学書売り場。フランスの書店は平台が多いので大変見やすい。

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Boulanger Moderneで買ったキャラメルのエクレア(2.5ユーロ)。とろけるような美味しさです。

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懐かしいサンジェルマン・ロクセロワ教会。ここでバスを降ろされて、向かいの停留所から81番に乗り継ぎました。

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オペラ大通り。7年前に死んだ次兄はこの風景が好きだと言っていました。放射状のパリの道は必ず何処かのモニュメントにぶつかります。

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オペラ座の階段。なぜか観光客が集まります。

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オペラ座のグッズ売り場の奥。開演前の散歩。

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ボックス席最前列からの眺め。

Baignoire

身仕舞いを整える小部屋もついています。バルザックの時代には他の用途にも使われたかも知れません。

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幕間entracteの光景。

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アンコール。脚本は破茶滅茶だが、それ以外は素晴らしい。ノリーナ役のナディーヌ・シェラの広い音域の迫力ある歌声、隣のエルネスト役ローレンス・ブランレーの素晴らしいテノール。他にパスクヮーリ役、マラテスタ役ともに聞き応えありました。

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古本屋で買ったシムノンの「猫」と「レ・ピタール」、コンパニ書店で買ったヴェルナンの「宇宙・神々・人間」ベンヤミンの著作集三巻と「カール・クラウス」

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